JASTJ高校生作文コンクール入賞者、3人3様の「科学との向き合い方」
コンクールは昨年春の「科学の甲子園」全国大会(2025年3月21日~24日、茨城県つくば市)で募集開始のアナウンスがあり、8月末までに全国から37作品が集まった。
「課題図書」として指定されたのは、『情報パンデミック あなたを惑わすものの正体』読売新聞大阪本社社会部(中央公論新社)、『江戸の骨は語る 甦った宣教師シドッチのDNA』篠田謙一(岩波書店)、『生命の星の条件を探る』阿部豊(文藝春秋)の3つ。ノーベル化学賞受賞者の白川英樹さん、物理学者の村山斉さん、科学ジャーナリストの元村有希子さんの3人の選考委員が全応募作品を読み、オンライン選考委員会での白熱した議論を経て受賞作3つを決めた。

受賞した3人の高校生。左から大塚蓮さん、辻本伸子さん、世継真奈美さん。それぞれ、後ろに立つ選考委員から賞を授けられた=2026年3月26日
大塚蓮さん(Harrow Internationnal School Appi Japan 2年)は、「僕は、小学5年生の時から骨の研究をしている」と書き始め、フライドチキンの骨からワニの解剖へと研究が広がり、『江戸の骨は語る』を読んで「研究には視野の広さや、さまざまな着眼点を持つことが重要だと感じた」と書いた。さらに、今はワニ型ロボットの開発に挑戦していること、これを使ってなぜワニのほとんどの種が絶滅に瀕しているか解明したいと思っていることなどを披露した。「研究と言うと、すごく難しいことをやっているようだが、まずはやってみて、疑問に思ったことを調べる、そのうちに新しい疑問が生まれて、そのことを調べる。それを続けている」と振り返り、「これからも生物の進化の研究を続けていく」と締めくくった。
受賞の挨拶は「僕は科学がホントに大好きです」と始まり、「わからないことを知ったときや、生活のなかで抱いた疑問が解けたときが楽しい」と元気にあふれていた。
辻本伸子さん(吉祥女子中学・高等学校 3年)は『情報パンデミック』を取り上げた。陰謀論について「古代ローマでカエサルが暗殺された時代から、・・人間が社会生活を送る限り、人と切っても切れない関係性にある」と書き出し、現代は「情報洪水」と「科学的理解の断絶」という二つの問題があると指摘。「分からないことを恥じない」という空気が大人にも子どもにも必要だ、と提案したうえで、陰謀論者は孤立しやすいという研究結果を踏まえて「『ただ存在すること』という価値を認めたうえで対話を行い、それを通じて孤独や孤立を減らしていくこと」を提言した。
受賞挨拶では、「高校の新聞委員会の活動がきっかけで、どうすれば正しい情報が伝わるのかという問題に興味を持ち、課外活動で自主的に探究してきた」と明かし、「対話をしていく先にあるのは世界平和。私は世界平和というのを見たことがないけれど、それを語るだけでなく目指すことに価値があると思う」と大きなビジョンを示した。
世継真奈美さん(福井南高等学校 2年)は、高校での探究活動として、原子力発電の廃棄物で放射線量が極めて低く人体に影響が出ないと国から認定を受けた金属(クリアランス金属)で街灯をつくる、といった実践をしている。『情報パンデミック』はコロナ禍での情報を主に取り上げていたが、「私はこれを放射線に置き換えて読み進めていった」と書き、「一番印象に残ったのは、たとえそれが科学的根拠に基づいた情報であったとしても自らの思いから外れると否定につながる、という箇所だ」とつづった。「クリアランス金属の放射線量だけに焦点を当てても、言い合いになって終わってしまう。それよりも、私たちはクリアランス制度の発信者として他者から信頼されるかどうかが鍵だとも思う。先輩たちがそうであったように、私たちもこれからの社会を担う同世代を中心に、この社会課題に挑んでいきたい。この本を読んで、改めてそう考えさせられた」と結んだ。
受賞挨拶は「皆さんは原子力のことをいつ学びましたか」という問いかけから始まり、「私は高校に入るまで全く知らなかった。先輩の活動を見て、私もやりたいと思って始めた。今後、どのようなアプローチを取っていくのがいいか、今日お集まりの皆さまの意見も聞いてがんばっていきたい」という決意表明で終わった。
3人の選考委員もそれぞれ壇上でコメント。村山さんは「社会は自分たちでつくっていると考える高校生がいることに感動した。正直いって、私は負けたと思った」と受賞者を称えた。式のあとは、受賞者、選考委員らが参加する昼食会があった。村山さんは「3人の素晴らしい高校生と交流できて、とても楽しい1日だった。日本の将来が明るいことがわかりました」と振り返り、「今回は単発の企画でしたが、可能であれば毎年行ってほしい」とJASTJにエールを送った。
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