元WHO統括官・一盛和世さんの「蚊学館」を訪ねて「国の生き方」を考えた
総選挙が始まった
あれよあれよという間に総選挙が始まった。告示の直前に、『科学に魅せられてー女性研究者という生き方』(日本評論社)に登場していただいた元世界保健機関(WHO)統括官の一盛和世さんのオフィス・蚊学館を訪ねた。
ご存知のように、WHO本部はスイス・ジュネーブにある。一盛さんは熱帯の国々での駐在を終えて2006年から本部に勤務し、2013年に「世界リンパ系フィラリア症制圧計画責任統括官」として定年を迎えた。帰国してから構えたオフィスを蚊学館と名付けたのは、フィラリア症は蚊が媒介し、蚊について研究を重ねてきたからだ。そこに飾られている熱帯の絵や民芸品の来歴を聞くうち、話は「スイスの生き方」に及んだ。気軽なお喋りだったけれど、そこで「日本の生き方」について考え込んでしまった。そして、これこそ総選挙の一番大切な争点だと気が付いた。
バチカン市国に兵を派遣しているスイス軍
かの国が永世中立国であることはおそらくすべての日本人が知っているだろう。だが、「徴兵制があり、国民皆兵の国である」と知るや「日本の参考にならない」と思考停止しているのではないだろうか。少なくとも私自身はそうだった。
「あそこは核シェルターを作って、守りを固めているでしょ。それにバチカン市国には常に兵隊を出している」。初耳だった。調べてみると、バチカン市国には軍隊がなく、それでスイス軍から派遣された兵が治安を守っているとある。確かにこれは永世中立国の軍の仕事にふさわしい。

オフィスの一盛さん。後ろは、南太平洋の島国で貰った団扇とレイ。手作りの貝殻レイをお客さんにかける習慣があると聞き、「お花ではなく貝殻!」と驚いた。貝殻が島ごとに違うのも興味深い。
「スイス人は誇りが高くて、自分たちの国は自分たちで守るという意識が強い。私は現地で暮らしてそう感じました。でも、外に攻めに行くことはしない。それで、うちの国を攻めたっていいことないですよ、資源はないし、山ばっかりだしって、アピールしている感じ」
なるほど、日本だって資源はないし、山ばっかりだ。「攻めたっていいことないですよ」アピールはいくらでもできる。強がる必要はない、と改めて思った。ミドルパワーとしてやっていく。大国と張り合う必要なんてさらさらないのだ。
高市首相の外交方針は恥ずかしい
だが、高市早苗首相は就任早々に「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と宣言した。張り合ってないですか。そもそも、地球は丸いからどこにも「真ん中」はない。宇宙にもない。「自分が宇宙の中心にいる」という天動説が信じられていた時代はとっくに終わっているのに、何だか恥ずかしい。
現実の世界を見れば、大国の横暴がまかり通り、同盟の危うさが白日のもとにさらされた。何が起こるかわからない国際情勢になっている。呑気なことは言っていられないとは思う。「咲き誇る」というのは呑気だとも思う。で、日本はどうすべきなのだろう?